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【完売】2021.10.23「KANGEKI 間隙」vol.16 長井龍presents【中島悠監督特集】

本イベントは予約にて完売となりました。


「KANGEKI 間隙」vol.16 長井龍presents【中島悠監督特集】

■上映作品:『判子』(26分)、『世界征服やめた』(22分)
■開催日時:2021年10月23日(土)
18:000開場|18:30開映(19:45終了予定)
ゲストトーク:中島悠(監督)× 長井龍(映画プロデューサー)× 小原治(KANGEKI主宰/ポレポレ東中野スタッフ)

当日行われたトークの模様はこちらをご覧ください。→KANGEKI_talk_16
(採録・撮影=小原治)

■料金:1500円
■定員:25


■予約
氏名、人数、参加日を記入し、kangekispace@gmail.comまでお知らせください。後日、担当・小原(オハラ)より確認の返信をさせていただき、予約完了となります。
※当日券はポレポレ東中野の窓口にて、朝の開館時間(9:40)より販売となります。
※予約で満席になれば当日券の販売もございません。
電話でのお問い合わせ:03-3227-1445(ポレポレ坐)


「KANGEKI 間隙」では主宰の僕がどなたかにプレゼンターをお願いする回も積極的に作っています。他者の目線を通して映画の価値と出会っていくことは、自分の中でより広くより多面的に映画をとらえていくための経験にもなるからです。
vol.16のプレゼンターは長井龍くんです。映画プロデューサーとして『21世紀の女の子』や『人と仕事』といった数々の商業映画に関わる一方、自主映画の祭典・PFFのセレクションメンバーも6年に渡り務めてきました。僕が長井くんと初めて出会った2012年、その時すでに彼は東京学生映画祭の実行委員長として無名の自主映画たちと最前線で関わっていました。新しい映画との出会いを通して時代の感性を読み取っていく長井くんの眼は、昨日今日でつくられるはりぼてではなく、長年に渡って数々の実践の場で練られてきた弾力があります。
今回、そんな長井くんが激賞する中島悠監督の『判子』『世界征服やめた』を初上映します。中島監督にとっても初めての上映会となり、長井くんがテキストに記している「第一発見者としての喜び」をお客さんと一緒に味わえる上映会になれば嬉しいです。当日は中島監督をお迎えし、長井くんと僕と3人で中島映画の魅力について語り合います。皆様ぜひお越し下さい。(ポレポレ東中野 小原治)


【PFFのセレクションで出会った、中島悠監督に想いを寄せて】(長井龍)

ぴあフィルムフェスティバル(PFF)のセレクションメンバーは、たくさんの自主映画を観ることができる。中でも嬉しい瞬間は、夜、Vimeoのリンクで視聴した映画に心を射抜かれ、「自分がこの映画の第一発見者なんじゃないか!!?」と悦に浸ってしまう傲慢なひとときにあると思う。
一年前、『判子』を観た時も、心がざわめき、月並みの夜が、かけがえのない一夜に変わったのを覚えている。『判子』は紛れもないデビュー作だった。将来、監督として突き進む中島悠の、威厳や覚悟が画面いっぱいに溢れ出ていた。そして、その当時19歳の生き急ぐ危うさが、なによりも無視できなかったのだ。
中島悠――大切な推しができたので、待ち受ける審査会議に向け、魅力をしたためていった。
審査会議では、各々の推しの作品をプレゼンしていき、その意見を汲み取り、最終的にはPFF側で上映作品が編成される。セレクションメンバーの熱い想いが大切で、たとえ多くのメンバーが推している作品だとしても、熱意に欠けようものなら選ばれるとは限らないのが、PFFの奥ゆかしさだなぁ、としみじみ感じている。
さて、そんな審査会議を経て迎えたラインナップ発表。精一杯推したはずの『判子』は、なんと、PFFアワード2020に選出されなかったのである!!!!!大変だ!大事件だ!!天変地異だ!!!『判子』が、通らないだとっ??えっ、審査会議では、自分以外にも、確かに推す人もいたのに、である。う…前言撤回!奥ゆかしさ反対!!!!!
と、まぁ、そんな悔しさを噛み締めながら、月日は経って、今年も、セレクションメンバーを務めることになったのです。そういえば、セレクションメンバーを初めて務めた6年前は、Vimeoでなく、DVDで審査をしていた。それはそれは大量のDVDが送られてきた。たった数年で、視聴形態はガラッと変わる。時折、iPadでVimeoを観ていると、DVDにはテレビの前にちゃんと座らせるという拘束力があったなぁ、と、良し悪しを感じさせられる。しかし、もっと昔の審査は、フィルムだったので、試写室に集まって観ていたという。(それはもはや上映会ではないか!)
閑話休題。さて、そんなこんなで、今年も割り振られた審査のリストを見た途端、飛び込んできたのは、中島悠という名前。再会の嬉しさ反面、果たして今回も面白い作品なのか、と、好きだからこその一抹の不安を抱くもタイトルを観て、そんな疑念は一気に吹き飛ばされた!
『世界征服やめた』中島悠はやっぱり興味深い。タイトルだけの見掛け倒しではなく、演出・脚本も、挑発と洒落っ気で満ち満ちており、鑑賞しながら、「いいぞいいぞ」と自然と口からこぼれ落ち、気づけば背筋を伸ばしてiPadを観ていた。もはや、完全に中島悠の虜となったわけです。しかし、『世界征服やめた』も、PFFアワード2021に選出されることはなかった。2年連続で推しが推されぬ自らの不甲斐なさを感じつつも、逆に、この監督は、独自の道を行くのではないか、と、次なる未来がより一層楽しみになってきたのです!!
そこで、ご提案です。このタイミングで、皆さんも、そんな中島悠の第一発見者になってみませんか?今回が、監督にとって初めての上映会。まだ誰にも知られてない映画をスクリーンで観ることは、まるで、試写室に集まって自主映画を観ていた、フィルム時代の審査会を追体験しているとも言えるのではないでしょうか!?そんな気分を味わいましょう!
最初で最後のスペシャルな一夜に、入魂の2本を一挙上映!いったい、中島悠とは何者か?!乞うご期待!!


『判子』(2019年/26分)


地元の小さな工場で惰性的に働く牧野(20)。高校時代の友人中島(20)の活動を噂に聞き自分の仕事に違和感を抱き始める。そんな中、牧野は高校時代に中島と交わした約束を思い出す。

 

『世界征服やめた』(2020年/22分)


脚本家としての成功を夢見るが、筆が進まず一年ぶりに地元の島に帰郷する幸一(21)。島で暮らす同級生の祐希(21) との 再会で状況は一変する。

 


『世界征服やめた』へのコメント
―フィクションを生きていく覚悟―
この映画で観客がたびたび目撃することになるショットの繋ぎ間違いは、私と現実�の接着点の不確かさを浮き彫りにしていく。
昼間にキッチンで冷蔵庫を開けて『豆乳ないじゃん』と独り言を言ったはずが、『あるわけないやん』と夜に居間で食事している母親の返事と繋がってしまうし、さっきまで手ぶらで歩いていた脚本家志望の男は、次のショットで上着とカバンを持ってバイクを引き、どこかに行こうとしている。
疫病が蔓延した世界をフィクションとして想像していた時代は終わり、それは現実になってしまった。
旅客機がビルに突っ込むことも、津波が街を飲み込んでいくことも、AIが生活を管理してくれることも、もうフィクションではない。

“今日のご飯考えるのでせいいっぱい”な私たちの小さな世界のうだつの上らない日々のすぐ傍にも、フィクションは息を潜めて横たわっている。
夢や希望、犯罪や死。想像していたことや想像すらできなかった出来事の全ては、いつでもこの現実と接続する。それは繋ぎ間違いでもなんでもない。

五十嵐耕平(映画監督)


『世界征服やめた』へのコメント

『世界征服してやる』ではなく『世界征服やめた』である。
タイトルからして既に何かを諦めている。
中島映画に漂うのは、野心というより諦念だ。
登場するのは地方でくすぶる無名の若者たち。
とても明るい未来はやってきそうにない。
しかし、カメラで捉えられた彼らの生きる世界は、驚くほどに美しい。
薄紫色に染まる空。果てしなく続く土手。強風に揺れる枯れ草。冴えない主人公に降り注ぐ陽の光。小さく生きて死んでいく人間の卑小さと、そんなことなどまるで意に介さない世界の揺るぎなさ。
そのどちらも同等に美しく思わせる映画を差し出す中島は、世界を一体どのように見ているのか。
そこにあるのは諦念じゃなくて野心なんだろうか。気になって仕方がない。

木村奈緒(フリーライター)


『世界征服やめた』へのコメント

奇妙でおそろしい出来事が画面のなかで次々とおこっているはずなのに、それを当然のように見つめるこの映画の瞳が気になりました。
さっきまでそこにあった世界や自分が突如として豹変してしまうことすら、あらかじめすべて了解しているようです。

『判子』を見たときもそうでしたが、私たちのいまの社会や時代がここには確かに映っていると強く感じました。
夢想すべき外部がなくて、かといって頼れる定型ももうなくて、でもどうやって生きて死んでいけばいいのか。
登場人物の佇まいにある乾いた殺気はそんな答えのない問いを突きつけてきます。

この監督にはこれからもついていこうと思います。

新谷和輝(ラテンアメリカ映画研究者)


『判子』へのコメント

2020年のPFF審査に参加したとき、『判子』に当たった。
割り振られた見るべきリストに入っていたという意味だが、これは当選したと言ってもいいくらいの当たりだった。
垢抜けた映像表現はそこにはなく、繊細さと、隠し切れない獰猛さがみなぎっていた。
あらゆる危うさを抱えていた。
最後まで入選させるよう説得する努力をしなかったのはこちらの不徳の致すところだが、今回、『世界征服やめた』を観て、歓喜しました。
作を重ねるごとに洗練されるどころか、野蛮さが増していた。
どうしたらこうなるのでしょうか?
気になって仕方ありません。
次作も必ず拝見したいです。

山中瑶子(映画監督)


 

中島悠プロフィール
2000年12月18日生まれ。2019年、名古屋ビジュアルアーツに進学し、19歳の時に『判子』を監督。在学中に、GATSBY CREATIVE AWARDS 14th FINALにて日本一位となる。卒業制作にて映画『世界征服やめた』を制作。卒業後上京し、現在東映で連続ドラマの助監督を務めている。

長井龍プロフィール
1991年、静岡市生まれ。早稲田大学映画研究会で自主映画を始める。在学時から『おとぎ話みたい』(13-14年/山戸結希監督)の興行や、『いいにおいのする映画』(16年/酒井麻衣監督)の製作に携わるなど、多岐に渡り活動。その後、レコード会社に就職し、『なっちゃんはまだ新宿』(17年/首藤凜監督)、『21世紀の女の子』(19年)、『ホットギミック ガールミーツボーイ』(19年/山戸結希監督)などの映画を製作。現在は映画会社のスターサンズに籍を置き、10月8日からは、製作作品の『人と仕事』(21年/森ガキ侑大監督)が公開となる。