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【完売】2021.9.4「KANGEKI 間隙」vol.15 藤川史人監督『Supa Layme(スーパ・ライメ)』

本イベントは予約にて完売となりました。


「KANGEKI 間隙」vol.15
■上映作品:『Supa Layme(スーパ・ライメ)』(103分)
■開催日時:2021年9月4日(土)
18:00開場|18:30開映(20:45終了予定)
ゲストトーク:藤川史人(監督) × 村上浩康(映画監督) × 小原治(KANGEKI主宰・ポレポレ東中野スタッフ)

当日行われたトークの模様はこちらをご覧ください。→ KANGEKI_talk_210904
(採録・撮影=木村奈緒)

■料金:1500円
■定員:25

【関連企画】2021.8.29「KANGEKI 間隙」vol.14 藤川史人監督『いさなとり』


■予約
氏名、人数、参加日を記入し、kangekispace@gmail.comまでお知らせください。後日、担当・小原(オハラ)より確認の返信をさせていただき、予約完了となります。
※当日券はポレポレ東中野の窓口にて、朝の開館時間(9:40)より販売となります。
※予約で満席になれば当日券の販売もございません。
電話でのお問い合わせ:03-3227-1445(ポレポレ坐)


藤川史人監督最新作『ひかりのどけき』には藤川さんと旧知の仲で親交も深い一組の家族(夫婦と2人の子供)が出演しています。この映画はフィクションでありながら、実生活の中で夫婦になるまでに共に過ごした時間や、やがて子供が生まれ4人の家族として育んできた時間が、そんなストーリーを脚本に書き込むのとは別の雄弁さで映画の中にも流れていました。
劇中、4歳の子供が自分に向けられたカメラに視線を返します。それがごく自然な挙動として映っていたぶん、画面越しの僕は虚をつかれました。大抵それはフィクション映画としての約束事を逸脱する行為としてNGになるからです。しかしこの映画はそんな映画づくりの現場に生じる強張りからウィンクがこぼれるような微笑ましささえたたえながら、子供の視線を包み込みます。
僕が藤川さんの映画に魅せられるのは、作品ごとに映画の「幅」を開拓しようとするアプローチが、映画作りをより幸せな行為にするための探求として映るからです。それはこの世界で映画を撮ることに対する一監督としての態度の現れでもあります。
今回の「KANGEKI 間隙」は藤川史人特集として監督作を2回に渡り連続上映します。8/29(日)は藤川さんが広島県の三次市で出会った地元の中学生3人を主演にひと夏の出会いと別れを描いた『いさなとり』。9/4(土)はペルーのアンデス高地でリャマやアルパカを飼育している一家がある日ふもとの村に移住するまでの一年半を記録した『Supa Layme』。どちらも藤川さんが現地の風景の中に身を置き、そこで暮らす人たちとの関係を時間をかけて育みながら撮影した作品です。上映会には映画監督の加納土さん、村上浩康さんにも対談相手として参加していただき、藤川映画の魅力に迫ります。
最後に。最新作『ひかりのどけき』が観客の前で上映される時が来るなら僕も何かしらの形で協力したいと思っています。今回の「KANGEKI 間隙」にお越し下さるみなさんにもご期待いただければ幸いです。(ポレポレ東中野 小原治)


【間隙に向けて】
スーパ・ライメのこと(藤川史人)

2015年、「いさなとり」という映画を広島の三次(みよし)という町で作り終えた私は意気消沈していた。撮影時に、私が自分の考えや意思をスタッフと共有できなかったため、現場を混乱させてしまい、多大な迷惑をかけてしまったことに愕然としていたのだった。私は、コミュニケーションがとれないのなら、いっそのこともっとコミュニケーションがとれない環境で映画を作ってみよう、と思い、ペルーに行くことにした。
学生時代に1年間リマにある考古学博物館で働いたことからペルーは馴染みのある国だった。こうして2017年、私はおよそ10年ぶりにペルーの地を踏むことになった。
当初からアンデス地域で何か撮ってみたいと漠然と考えていた。そして約1年かけてペルーとボリビアのアンデス地域を旅しながら、受け入れてくれる土地を探した。そうやって最終的に出会ったのがスーパ・ライメ一家だった。
彼らは標高4,700メートルのアンデス高地でリャマやアルパカを飼養しながら「伝統的な」牧畜に従事していた。そんな彼らの家に居候させてもらい、3か月が過ぎたころにはもう撮影を始めていた。私は当初、撮影を始めるまで半年か、もしかすると1年は時間を要するのでは、と考えていた。お互いの信頼関係が築けるまでカメラを向けることはできないと考えていたからだった。しかし、一緒に暮らし始めてすぐに、私が彼らのことを信用している以上に彼らは私のことを信用してくれている、と私は感じた。そうやって恐る恐る撮影のことを相談すると、彼らは快諾してくれた。
標高4,700メートルの高地では、私は子供よりも、老人よりも役に立たない存在だった。少し歩くと息切れがして、寒さでいつも台所のかまどの火にあたっていた。サッカーも、アルパカの放牧もできない、全くの役立たずの存在だった。そんな私がカメラと三脚を担いで走っているのを見て、彼らは笑った。「No corras hijo(おい息子よ、そんなに走んなよ)」と父親にたしなめられながら(ちなみに彼は私の3つ下だ)、必死で撮影する私を面白おかしく感じているのだと思った。
資金がなくなると日本へ一時帰国し、日雇い労働でお金を貯めてまたペルーへ帰る暮らしが続いた。そうして2018年6月、撮影を終えて帰国し、本格的な編集に入った。編集には1年以上を要し、完成したと思えばcovid-19が感染拡大、結局それ以降ペルーへは帰れていない。一家に映画を見せられていないことが唯一の心残りではあるものの、日本に帰国する前に、この映画がどうなるのか彼らと話し合ったときのことが思い出される。彼らは映画館に行ったことがないため、具体的にどこまで伝えられたか定かではないが、「日本で、不特定多数の人たちがあなたたちの映画を見ることになるかもしれない、そうなるようにできるだけのことをします。もしこの映画でお金が入ったら、山分けしましょう」と片言のスペイン語で言った。恥ずかしそうに、嬉しそうに彼らは笑った。
恐らく、彼らでなければ、私はアンデスの厳しい環境の中で生きることはできなかっただろう。恐らく、彼らでなければこの映画は撮られることはなかっただろう。そんな彼らが、なぜ住み慣れたアンデス高地からふもとの村へ移住したのか、しなければならなかったのか。その話は上映会のときにしてみたいと思っている。
来年には、ペルーへ行けるようになるかと淡い期待を抱いている。真っ先に彼らのところに行き、映画が完成したこと、そして彼らを見て日本の人たちが何を感じたかを伝えたいと思う。


『Supa Layme(スーパ・ライメ)』


2019年|103分|カラー|16:9|ペルー
出演:Vicente Supa Huamani , Veronica Layme Torres , Dani Daniel Supa Layme , Roly Jeferson Supa Layme , Reina Elizavet Supa Layme , Jonatan Efrain Supa Layme
監督・編集:藤川史人


【作品解説】
南米ペルーのアンデス高地で牧畜を営むスーパ・ライメ一家。一家6人と、リャマとアルパカが200頭、羊が15頭、ニワトリ5羽、それに馬とロバ。標高4700mの高地で生きてきた彼らがある日ふもとの村に移住した。これは、そんな彼らの日常を記録したおよそ一年半の記録。

【監督プロフィール】
藤川史人(ふじかわふみと)
1985年広島生まれ。特定の土地に一定期間暮らし、そこで生きる人々と映画制作を行ってきた。監督作に「過日来」(2012年)、「いさなとり」(2015年 PFF2015観客賞・日本映画ペンクラブ賞、バンクーバー国際映画祭招待上映、リマ・インディペンデント国際映画祭グランプリなど)、「Supa Layme」(2019年 リマ・アルテルナ国際映画祭国内部門グランプリ、パチャママ国際映画祭コンペ部門入賞など)、「ひかりのどけき」(2021年)など。


【お客様へのガイドライン】
当イベントでは、新型コロナウィルス感染防止と共に、お客様に少しでも安心してご鑑賞していただけるための環境づくりに努めてまいります。
そのため、下記ガイドラインへのご理解・ご協力の程、よろしくお願いします。
・ご来場時にはマスクを着用して下さい。※マスクを着用していないお客様には受付にてマスクをご購入していただきます。
・入場口にアルコール消毒液を設置しておりますので、ご利用ください。
・咳や発熱、その他体調に不安のある方はご来場をお控え下さい。
・従業員や登壇者もマスクの着用を義務付けております。
・場内でのお食事はお控え下さい。お飲み物はご利用していただけますが、容器の問い扱い等、周囲のお客様には充分ご配慮下さい。(ドリンクはカフェでも注文できます)